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レズ声優出張所Part4

1 :& ◆Jx3uuDAUoo :2006/02/17(金) 20:57:19 ID:22IXIXnD
ここは声優板「レズ声優」の出張スレです。
本スレ:レズ声優 Part8
http://anime.2ch.net/test/read.cgi/voice/1124473961
「この声優は絶対レズだ」とか「レズらせたい」という声優さんを
「エロ話中心で」思う存分マタ?リと語っちゃって下さい。
妄想捏造ドンと来い。
SSも書いちゃって結構です。っていうか、キボンヌ
執筆して下さると言う方はトリップだけは忘れないで下さいね。

私が書き込んでいたら512kを超えたので書き込めませんと出ました。
とにかく新スレを立てておきます。



490 :名無しさん@秘密の花園:2006/05/19(金) 23:30:45 ID:iuit9ukn
RTH2でゆりしず投下させてください。
ゆりしーの一人称とか時系列とかフィクション多めで先にごめんなさい。

491 :名無しさん@秘密の花園:2006/05/19(金) 23:33:08 ID:iuit9ukn
一人で吐くのは好きじゃない。
ジャーと音を立てて勢いよく流れていくトイレの水を見てぐるぐると考える。
いや、吐くときに誰か居て欲しいとかそういうんじゃないんだけど、吐くのは嫌い。せっかく食べたご飯が流れていくのが悲しい。
ゆりしーカレー好きなのに。
ため息をつくとトイレをもう一回見て、個室から出る。
駄目だ。ため息をつくと幸せが逃げる。

「ゆりしーちょっと、まぁだ?」

大っきな声で外から静ちゃんが呼ぶ。
幸せが逃げるのは嫌だ。
ご飯を吐くのも嫌だけど、幸せが逃げるのはゆりしーにはもっと困る。
ご飯が流れていったのも、ため息をついたのも静ちゃんのせい。
ため息をつくと幸せが流れて、静ちゃんが逃げてく。
鏡に映る顔はいつもよりもなんだか不細工でへこみたくなる。
チーク持ってきてたら良かったんだけど、楽屋においてきちゃったから叩いたらなんとかごまかせるかもしれない。

「先いくよー」

真っ白になった顔を叩いてたらなんかもう、すごくへこんできてもう一回ため息をついた。

「静ちゃん待って!」

ゆりしーがこんなに悩んでいるのに静ちゃんはけらけら笑って「ゆりしーを置いてく」なんて簡単に言う。
だから、静ちゃんが逃げてくのが嫌だからゆりしーはため息を控えてるのに。
静ちゃんがいるからゆりしーはトイレで吐いてるのに。


492 :名無しさん@秘密の花園:2006/05/19(金) 23:33:58 ID:iuit9ukn
「あ、ゆりしーこっから落ちてみない?」
「えぇええええ!?」

見下ろした階段はぐるぐると回って床が遠い。
ゆりしーの意識も遠くなりそうになる。

「ここから落ちたら普通死ぬよ!」
「いや、ゆりしーなら死なないかなーと思って」

楽しそうに言ってやっぱりけらけら笑ってる静ちゃんはやっぱりドSだ。
なんかのヒーローなら落ちても死なないと思うけど、やっぱりゆりしーはここから落ちたら死ぬと思う。
ゆりしー男じゃないし、なるならヒロインだし。
でも、ゆりしーはヒロインでもない。
ヒロインだったらいいと思うけど、ヒロインじゃない。
ヒロインなら今頃静ちゃんはゆりしーのことが好きになってて、二人で幸せだったと思う。
っていうかヒロインは吐かないし。

静ちゃんが好きになって、カレーが食べられなくなってでもお仕事だから食べて吐くようになって、ため息をつくようになって静ちゃんが逃げないか心配になって吐いたらゆりしー不細工になるから静ちゃんに好きになってもらえない。
だからせめてゆりしーは静ちゃんの相棒で傍にいられるようにドMの道を極めなくちゃいけない。

「ほぉらゆりしー、お仕事に遅れるよ!」

階段を見てたからそっちから行くのかと思ったら、静ちゃんはあっさりエレベーターのほうへ歩いて行ってて(どうせ階段はめんどくさいと言うんだと思う)ゆりしーはまた置いていかれそうになって「置いてかないで」と静ちゃんを引き止める。
ちらりと最後に見た階段の下、遠くの床にぺしゃんこになった自分を想像してまたへこんで、そんなことを言って楽しそうだった静ちゃんをちょっとだけ恨んだ。

恋は辛い。



493 :名無しさん@秘密の花園:2006/05/19(金) 23:35:05 ID:iuit9ukn

最近ゆりしーの様子がちょっとおかしい。
元から変な子だ変な子だと思っていたから別に、そんなに心配でもないけどこの頃は少し、前にも増して変だ。

「ちょっと、あたしの顔になんかついてる?」

きつい口調にならないように気を使ってもゆりしーはびくっと肩をすくめて「な、ないよ!」と挙動不審に目をおどおどさせる。
その割にはラジオの収録中でも待ちの時間でもこっちをじぃーっと物言いたげに見てはため息をついている。
一度なんて楽屋のドアのところから廊下でスタッフさんと話をしていたあたしをこう、「家政婦は見た!」みたいな感じで睨むように見てて背筋が凍った。
流石に貞子とまでは言わないけど怨念を感じさせる視線だった。
一瞬嫌われたのかなと思ったけど、ゆりしーは嫌いな人間をじっと見つめるようなタイプではないような気がするし話をしてみると案外普通だし。

「なにかあったの?」「なにか悩んでるの?」と聞いてみても「んーん、そんなことない」で終わり。
話は膨らまないで、疑問ばっかり膨らんでく。
コイツほんとにクローズだな。
思っても、仕事のパートナーではあるし関係をまずくしないに越したことはないので黙ってる。
視線を感じてイライラはしても仕方ないと割り切って仕事をするしかない。
でも、このところ長時間ゆりしーを向き合うことになるラジオの収録はあたしにとって負担になっていた。
ゆりしー鸚鵡返しするしね……いいんだけど。

494 :名無しさん@秘密の花園:2006/05/19(金) 23:37:06 ID:iuit9ukn
!すみませんトリップ忘れてた!トリップつけてまた来ます。本当に申し訳orz

495 : ◆4D0fClhSfA :2006/05/19(金) 23:47:58 ID:iuit9ukn
―ちょっと今日、ラジオの二人の雰囲気がぎすぎすしてなかった?

収録の後あたしにだけ呼ばれて言われた言葉がそれだった。

―あー、そうですか?体調のせいですか、ね。すんません。気をつけます

ようやくそれだけ答えて、表情が見えないように頭を下げた。
理性ではゆりしーに言ってもへこむだけだから、あたしにこれが来たってわかってる。
でもこれ、最近のゆりしーのせいだと思うと、どうしようもなく腹がたって相変わらずこっちを見てたゆりしーに「あたしこの後仕事だから」って早口で言って出てきた。

道を歩いていてもイライラする。
ゆりしーは嫌いじゃない。と、思う。
女の子らしいし、真っ直ぐだし。
でもその真っ直ぐさにものすごくイライラすることがある。
変なこと知ってるくせに物知らずだし、漢字読めないし。
絶叫がうるさいし、耳が痛い。
突っ込みできないし、話膨らまなくていつもあたしが苦労するし、コメントは下手であたしの言うこと鸚鵡返しにして、盛り上がらない。
何考えてるかわからないし、その前にたまに何言ってるかわかんない。
味覚変だしカレー不味いし話かみ合わないし。

でも、ギャラが一緒で仕事のパートナー。


496 : ◆4D0fClhSfA :2006/05/19(金) 23:48:57 ID:iuit9ukn
道端を歩いてたおじさんがあたしをみてぎょっとしたような顔をして慌てて目をそらす。
さらにイラっとして乱暴に携帯を取り出してふと、昨日の電話を思い出した。

―静。それさ、ちょっと祐里香ちゃんと話、したほうがいいよ

仁美さんは普段はあんまりしっかりしてないけど一応しっかりしてて、正しいことを言うことが多い。
けど、話をすることを思うと気が重い。

「あー、泣くかなー」

地下鉄の駅が見えてきて、階段を下りながらうるうるしたゆりしーの大きな目を思い出した。
あの、顔もな―
やや薄倖そうな、まるでいじめられ待ちのような顔。

―静ちゃん

あの高い声が聞こえたような気がしてテンションが下がる。
降りてきた階段越しに見上げた空は曇っていて、さらに気分が悪い。
ゆりしーのへこんだ顔が浮かんできてため息をついて切符を買った。

497 : ◆4D0fClhSfA :2006/05/19(金) 23:50:29 ID:iuit9ukn
コンビニで買ったつまみを口に放り込んで顔をしかめる。
お仕事が終わってもお仕事のことで悩むのは本当に嫌なことだ。
なにより酒が旨くない。
―そっかー、そうだよねー。
「そっかじゃねぇよ!」

ゆりしーの声で相槌を打たれて箸袋を放り投げた。
ひらっと頼りなく飛んでへろっとテーブルに落ちる様はまるでゆりしーみたい。

「オマエのせいだっつの」
ビールをあおって缶をダンっと叩きつけると、ため息が落ちた。
―静ちゃん、ダメだよ。ため息をつくと幸せが逃げるんだよ

こういうどうでもいい豆知識を信じていて自信満々に人に喋るのがゆりしーだ。
その割には最近ため息ついてるくせに。
ため息をついてははっと我に返って今のナシ!って感じで背を仰け反らせ、きょろきょろと周りを見渡してなぜか、あたしを探す。
で、へろっと笑う。
何がしたいかわからない。

でその、最近何度も見る笑顔がなんだか安心するみたいなでも不安みたいな複雑なへちょっとした笑顔で、なんだかなあと思う。
最初はそんな顔しなかったくせに。人見知りしてて、でも慣れるとあたしの顔みて「静ちゃん、静ちゃん」って嬉しそうで犬みたいに寄ってきたくせに。「置いてかないで」とか言ってさ。
まぁそれもキモいしちょっとウザいんだけど。


498 : ◆4D0fClhSfA :2006/05/19(金) 23:52:34 ID:iuit9ukn
「でもなー」
こんな状態では本当に、他のお仕事にまで差しさわりがある。
本当に世話が焼ける。
「なんであたしが」
これでゆりしーがなんも打ち明けなかったらもうおしまい。
見捨てる。あたしもお手上げ。自分でなんとかしてクダサイ。
お仕事はするけど、なんとか「こなす」ってことになると思う。
っていうかあいつ、大の大人のくせに本当にもう。
でもそれがゆりしーか。
机の端においてあった携帯を操作しアドレスから名前を呼び出してボタンを押す。
「出ろよ」
出なかったらオマエ、ほんとしらねぇぞ。


呑み屋に呼び出したゆりしーはキャスケットを深くかぶって小さな声で「あ、静ちゃん……」と言ったっきり机の脇に立っていた。

「まずは座れば?」

おせっかいだとは思うけどゆりしー相手だとどうしてもこうなる。
ため息をつくと、ゆりしーはびくっとしてあたしを見てまたイライラ……というよりも、気分が滅入った。

499 : ◆4D0fClhSfA :2006/05/19(金) 23:53:39 ID:iuit9ukn
わりと小洒落た雰囲気のお店なのに、この沈んだ空気はどういうことだろう。メニューを押しやって華奢なグラスに入ったビールを一口飲む。
本当はあたしはビールはジョッキ派だ。
まぁでもこの気まずさなら絶叫もないだろうから、それはいいか。
この雰囲気で浮くのはつらい。
「ご注文はなんにいたしましょうか」
キャスケットをぬがないままメニューをじーっと見ていたゆりしーのところに店員さんが来てくれる。
案の定うー、とかえーっと、あの、なんて唸るゆりしーに焦れて

「何にすんの」
「あ、あの、えと、じゃあ静ちゃんと一緒の」

ついかまってしまった自分にイラっとくるのに、店員さんのちょっと困った笑顔をみてまたガツンとなんか、胸にクる。
静ちゃんと一緒じゃわかんねぇよ。まぁわかるけどさぁ。
指差されて微妙な笑顔を浮かべて、同じ顔してた店員さんとアイコンタクトして、あ、この人可愛いとか思ってたら店員さんがいなくなってまた沈黙。
「で」
なるべく、なるべく穏やかに声を出すのに、ゆりしーはこの世の終わりみたいな顔してあたしを上目遣いに見る。



500 : ◆4D0fClhSfA :2006/05/19(金) 23:57:38 ID:iuit9ukn
「どうしたの。あ、まずその帽子脱いで」
「うん」
そういえばこの前同じ台詞言ったら「静ちゃん知らないの?帽子はファッションの一部なんだよ」とか言われて脱力したこと思い出した。
今日は素直でいいことだと思う。

帽子を脱いで店内をきょろきょろと見渡したゆりしーはいつものゆりしーだった。
違うところを敢えて探すなら今日は目の下の隈が濃い。
気づかなくて良いところに気づいて微妙な気分になるあたしに、ゆりしーが愛想笑いをして切り出す。
「あの、何だった?」
「何だったじゃなくて。言ったでしょ最近悩んでるんじゃないの、って。まぁ後、前々から呑もうって言ってたじゃない。で、せっかくだから誘ってみた」

とりあえず言いたいことは言ってどうだ、と相手を見るとゆりしーはまた何か言いたげな微妙な顔をしてあたしを見てる。

「うん」
うんじゃねぇよ。
突っ込みたいのをぐっとこらえる。
ここで突っ込むと後が続かないのは一緒にいるのが案外長くなっているからわかる。
黙り込むとさっきの店員さんがやってきてあたしと同じグラスをゆりしーの前に置いてそそくさと去っていく。
このテーブルの雰囲気は他人からみても相当悪いらしい。
「で、あんた何を悩んでるの」
「うーん」
「うーんじゃなくて。この際だから言ってみ?聞いたげるから」

501 : ◆4D0fClhSfA :2006/05/19(金) 23:58:51 ID:iuit9ukn
グラスを見て、あたしを見て、隣のテーブルを見てそれからまたあたし、グラス。
最初のあたしの時、ゆりしーの目はなんだか何かにすがるみたいだった。
「いえないよ……」
まるっきり子供の口調で言ってまた黙る。

「なんで」
「だって言ったら静ちゃんゆりしーのこと嫌いになる」
「だぁー、もうならないから!どんなしょーもないことでももう、十分呆れてるから大丈夫」
「呆れないでよー!」
「それは良いから言って」
「だ、でもわかんないよ!もう一緒にお仕事してくれなくなったらゆりしー困るもん」

「あたしも仕事で困ってるからここに呼んだんだっつの」

とは流石に言えず苦いビールのため息をついて頭を抱えた。
やっぱあたしのことか。
「まぁいいや。まずは呑も」
言えたあたしは立派な大人だったと思う。
このときまでは。

「いーえーよー」
「やぁだぁー」
と、普段のあたしならいい加減キレてるようなおばかな問答を繰り返すぐらいにいい感じになってきた頃、ゆりしーが白い顔で立ち上がる。
「ちょ、ゆりしートイレ」
「あんた大丈夫?ついてこか?」
「や、いい」
「そう?」

502 : ◆4D0fClhSfA :2006/05/19(金) 23:59:38 ID:iuit9ukn
ふらふらと立ち上がるゆりしーを見送っては見たものの、衝立や木の陰から揺れてみえるゆりしーの頭はもういい加減ぐらぐらしてる。
ゆりしーの限界を知らないけど、今日はあたしもわりと呑んだ方だと思う。
弾みをつけようと思ってあたし以上に飲ませたゆりしーが出来上がっていてもおかしくないわけで、流石のあたしも不安になる。
「大丈夫?」

個室なのを確認して声をかけるとゆりしーが「んー」と唸っているのがわかる。
「ちょっとあんた吐いてんの?」
「ゆりしー吐いてない!」

力いっぱいの否定はいつものラジオと一緒で酔った頭にきんきん響く。
「じゃあちょっと開けな」
「なんで」
「あんたの顔色確かめたいし。そろそろ出よ、飲みすぎでしょ。あたしもトイレ行きたいしさ」
「……うん」
さっきのが嘘みたいに小さい声がしてドアが力なく開く。
内開きのドアの向こうの個室は結構広くて鏡も大きくて綺麗だった。
その鏡の前の洗面台にゆりしーがちょこんと腰掛けている。



503 : ◆4D0fClhSfA :2006/05/20(土) 00:01:04 ID:iuit9ukn
「何してんのあんた」
「何……してるのかな」
「いやあたしが聞いてんだし。うっわ顔色悪!ちょっと大丈夫!?」
「静ちゃんがゆりしーの心配してくれた」
ぽつりと呟いたゆりしーが「へへー」と役の、このみのように笑う。
「嬉しいでありますよ体長」
「心配ぐらいするよ!あんた本当に……もういいや、今日は帰るよ」
「静ちゃん」
「何?さっさと行こ」
「今日は置いてくって言わないんだね」
「はぁ!?ったく、そんなこと言ってると置いてくよ。ほら」
置いていくなんていいながら手を引いてる自分が本当に面倒見が良くて、こんなところあったのかと自分でも吃驚する。
酔ってても他人の面倒がみれるあたしってすごい。
なんとなく吃驚した気持ちのままゆりしーの手を引いたら酔ってたせいで加減がわかんなくなってたみたいでゆりしーを強く引っ張りすぎた。

いつのまにか閉まってたドアを開けようとしてたあたしの体にゆりしーがぶつかってあたしはゆりしーとドアの間に挟まる。
「……静ちゃん、置いてかないで」
「だから、置いてってないでしょうが」
「そうじゃないよ!」
「な、んんっ」


504 : ◆4D0fClhSfA :2006/05/20(土) 00:01:59 ID:iuit9ukn
によ。
声が出たかはわからない。
唇と唇がくっついていたから。
つまりキスされてた。思ったときには舌が入ってた。
喋る途中だったのが不幸だったらしい。
シャンプーの匂いがして、指に指が絡む。
扉にもたれた背中の固い感触と反対に、腹から胸の柔らかい圧迫。
半開きの唇の間からぬるっとゆりしーの舌が忍び込んできて、あたしの口の中を動き回る。
唇が動いて下唇をはさんで、上へ。
「行っちゃやだ」
口を離さないまま囁かれて指が体を滑る。
繋いだまま、扉に押し付けられた手は力いっぱい握り締められている。
反対の手はあたしの体とドアの間に挟まれてドアノブを握ったまま動かない。
舌と舌が絡んで卑猥な音がする。
「っく」
ずらした唇からさらに声が漏れる。
強く揉まれて眉間に皺がよる。

「ちょっと」
抗議しようとしたけどまた口をふさがれる。
不覚だけど気持ちいい。
腰のあたりがじんとする。
「っん」
ふと背中が粟立つ。
唇を合わせたままのゆりしーの手があたしの胸あたりを触っていた。
正面からひっかかれて腰が抜けそうになる。
エロい恥ずかしい声が漏れて体温が一挙に上がるのがわかった。
反射で閉じていた目を思わずあけると焦点が合うか合わないかのところにあるゆりしーの目から涙が流れているのが見えた。


505 : ◆4D0fClhSfA :2006/05/20(土) 00:04:07 ID:yPcUsLng
「んん」
その、腰あたりを触られたときに我に返る。
首を振ってゆりしーを振り切ろうとして口元から涎が落ちる。
「っく、ちょ、やだって」
「……だよね。へへ、ゆりしー知ってた」
「ちょ」
がつんと音がしてあたしの頭がドアにぶつかった。
口付けたゆりしーの唇が動く。
あたしにこんなことをしているくせにゆりしーは苦しそうな顔をしてた。
「ごめんねごめんね」
「謝るなら」

続きは言えなかったんじゃない。言う言葉が見つからなかった。
謝るなら―どうしてほしいんだろう。
体を這うゆりしーの指に嫌悪感はなかった。
嫌悪感どころか、ちょっと、本当に不覚だけどぞくぞくきてる。
息が上がる。息苦しくなってキスから逃げようとするけどそれも積極的にはできない。鼻息が荒くなって鼻から声が抜けるのが恥ずかしい。
な、なんでコイツこんな上手いの!?
っていうかなんであたしこんな、ゆりしーなんかにいいようにされてんの?
思ったら無性に恥ずかしくなってドアに挟まった手を抜こうと身をよじった。
「ちょっと、やだ!」
「黙ってて」
足がいつの間にかあたしの足の間にあった。
「んっ」
パンツのボタンがはずされたのは覚えてる。
「お願い、静ちゃん。人来ないほうがいいよ」
「っは、あぁ、ん、ゆり、しっ……ふ」
心臓はばくばくするし息は上がるし喋れないし。
ゆりしーにいいようにされて、こんなところで喘がされて。
「ごめんね静ちゃん。ゆりしー女子高で……ごめんね」
「んんん!!」

506 : ◆4D0fClhSfA :2006/05/20(土) 00:04:51 ID:iuit9ukn
洗面所にへたり込んで見上げたゆりしーは泣いてた。
「ゆりしー、静ちゃんを好きになっちゃったの。ごめん。ごめんね」
泣き笑いの表情であたしを見てた。
「ゆりしーレズじゃないと思ってたのに静ちゃん好きになってごめんね。だからいえなかったの。言ったら静ちゃん、ゆりしー嫌いになっちゃうと思って。でももうダメだね」

正直に言います。

「もう迷惑かけないから……もう、静ちゃんの目の前に現れないようにするから。バイバイ」
「ちょ、あんたどこ行くの」
逃げようと思ったらあたしは逃げられた。
すごい力だったけど相手はゆりしーだし。
男相手だったら最初のキスの段階で「てめふざけんな」って怒鳴って膝蹴りかまして終わってた。
「でも女の子だしなぁ」とは確かに思った。
女の子だし、ゆりしーだし。
ゆりしーが出て行ったあと、慌てて外に出れるようにして追いかけようとした時にはもう店にゆりしーは居なかった。

怒涛の展開に呆然と戻ったテーブルの上には伝票とゆりしーの抜け殻のキャスケット。
普通金ぐらい払ってくだろヤリ逃げかよ!っていうかこれどうするの。
お金を払う間もうあたしはどっか、消えるなら消えたいし死ねるなら死にたいぐらい恥ずかしかった。

ふざけるな、ふざっけんなバカゆりしー!
拾ったタクシーの中で気分は最悪、空気も最悪。
運転手さんビビってんの知ってても無理。
最後の最後までゆりしーは他人迷惑な女だった。
この店にはもう来ない。絶対来ない。二度と来ない。


507 : ◆4D0fClhSfA :2006/05/20(土) 00:07:08 ID:yPcUsLng
長々邪魔して申し訳。途中まで失敗しててごめん。
続きあるけどここまででも長かったから、皆に許してもらえたら投下します。
とりあえずここまで投下できたから満足です。ありがとう。

508 :名無しさん@秘密の花園:2006/05/20(土) 00:09:22 ID:D4wMDcIo
ちょwwwwww寸止めかよwwwww
続きpls

509 :名無しさん@秘密の花園:2006/05/20(土) 00:23:38 ID:148QylOJ
途中までの投下逃げかよww
続きを!続きを!

510 :名無しさん@秘密の花園:2006/05/20(土) 03:08:29 ID:/y/qRQBS
やばい続きが気になって眠れbない。

511 :名無しさん@秘密の花園:2006/05/20(土) 03:55:02 ID:MRtXt58w
お願いします

512 : ◆4D0fClhSfA :2006/05/20(土) 07:30:57 ID:fK+qmT60
|・ω・`)

513 : ◆4D0fClhSfA :2006/05/20(土) 07:32:04 ID:fK+qmT60


やっちゃった―
もうゆりしーお酒を飲まない。
んーん、お酒のせいにするのは間違ってる。
ゆりしーは……私は私がしたいことをしちゃっただけ。
静ちゃんは可愛かった。可愛くて、嫌がってた。
嫌だって言われたときに頭が真っ白になった。
嫌われたと思ったら、止められなくなった。
これが最後だと思った。
暗い夜道を一人で歩きながら、涙が止まらない。
他人がいなくてよかった。
酷いことをしてしまった。後悔に押しつぶされそうになる。

―何かあったの?
静ちゃんは優しかった。
笑った顔が好きだった。
ゆりしーが変でも引いてても、それでも付き合ってくれた。
突っ込みを入れながら笑ってくれる顔が好きだった。
酔っ払いの顔も呆れた顔も好きだった。
感じてる顔はめちゃくちゃ可愛かった。

―この際だから言ってみ?聞いたげるから
こんなことになるならちゃんと言っちゃえば良かった。
静ちゃんならちゃんとゆりしーから逃げてくれたかもしれない。
もう聞いてもらえない。

―置いてってないでしょうが
手を引いてくれた。
でももう会えない。


514 : ◆4D0fClhSfA :2006/05/20(土) 07:32:59 ID:fK+qmT60
最後に見た静ちゃんは綺麗ですごくすごく可愛かった。
その、感じてる声がすごく色っぽくてドキドキした。
甘い声がまだ耳元でするみたいで、落ち着かない。
普段サバサバしてる静ちゃんがあんな顔で、あんな声でなんて想像してなかった―と言えば嘘になる。
想像してた。でも、それ以上に静ちゃんは可愛かった。
あ、って思わずって感じで言ったとき、ゆりしーどうかなっちゃいそうだった。
いつも綺麗にしてる長い髪の毛を揺らして、首を振ってた。
髪の毛の下の顔がどうなってるのか見たくて、覗き込んで押さえつけた。
ゆりしーの腕の中でちょっと苦しそうな顔して感じてる静ちゃんは思い出しても壮絶に色っぽくて、今でも頭がパンクしそうになる。
でも静ちゃんの声はもう聞けないし、あの声は他の誰かが聞くことになる。
もう静ちゃんはゆりしーの顔みて笑ってくれないし、優しくしてくれない。
わかってる。
そう思うとこのままどっか消えちゃいたくなるけど、ゆりしーはしちゃいけないことをしたんだから仕方ない。
あれはレイプでゆりしーは痴漢で犯罪者だ。

お仕事の時目を合わせません。
話もしません。でもラジオはどうしよう。
ゆりしー貧乏だけど下ろしてもらおうか。
多分静ちゃんはもうゆりしーの顔も見たくないと思う。

ぽろぽろと涙が落ちる。
自分でも思うよりずっと、静ちゃんのことが好きだったみたいだ。
もう会えない。
もう会っちゃいけない。

「ごめんなさい」

もう迷惑かけません。
でもゆりしーは本気で静ちゃんが好きでした。

515 : ◆4D0fClhSfA :2006/05/20(土) 07:33:45 ID:fK+qmT60

もう静ちゃんの前に現れない。
その言葉が気にはなっていたが部屋に帰ったあたしももう呆然とするしかなかった。
あったことがすごすぎて気力の限界だった。
信じられない。

女の子は好きだ。
確かに好きだけど、付き合えそうな気もするぐらい好きだけどそれとこれは話が別だろう。
大体相手はゆりしーだぞ!?
理性が悲鳴を上げてる。
お風呂入ってるときとか恥かし死にするかと思った。

置いてかないでって言ってた。
ふと思い出して、神妙になりかけるけどその次の瞬間頭に浮かんだ画が酷すぎて真っ赤になる。
恥ずかしいなんてもんじゃない。
ああいうことが恥ずかしいっていうより、あんな場所でゆりしーと。
ゆりしーと……

弾みで持ってきてしまったキャスケットを睨む。
頭の中がぐるっぐるしててとても寝る気にはなれない。
犬に噛まれたと思って忘れようって言葉があるし、そうしようと思って酒に手を出そうとするけど、あいにくうちには今ビールしかなくてビールは「あの」記憶に直結している。

「寝れない……」

516 : ◆4D0fClhSfA :2006/05/20(土) 07:34:59 ID:fK+qmT60
それなりに呑んだはずなのに目がさえて仕方ない。明日も仕事があるのに、どうしてくれんだまったく。
布団を頭からかぶって目を瞑ったら、またゆりしーが現れる。

「だぁあああ!」
あたしは役者だ。
そうだ役者だ。役者だから別に、あれぐらい。
羊を数えるよりも「役者だ」をカウントすることになりそうだ。

藪をついて蛇を出したってこのことだと思う。
まさかゆりしーがあたしを好きだとは思わなかった。
まさかそんなことで悩んでるとは思わなかった。
こっちを見てたし、そりゃあたし関連だとは思ってたけどあんた、本当にどういう頭の構造なの。
好きになったからってヤっちゃだめでしょ。あんたが男だったらエラいことだよ。
女だからっていいわけでもないけどさぁ。

切羽詰まってたんだろうなとは思う。
嫌いになるって言ったときのゆりしーは泣きそうだった。
ごめんねって何度も何度も謝っていた。

「謝るぐらいならすんな!」
やっとあの時言いたかったことが言えた……んだけど、それも間違っているような気がしてならない。
謝らなかったらいいのかあたし。
それも人として、大人としてどうかだしなぁ。
一番問題なのはこれはヤっちゃったという部類にしっかり入る出来事なのに、あまりこう……嫌悪感がないってとこ。
本意じゃなかったはずなのに、途中からそうでもなかった。
なんか気持ちよかった気がする。それがまたなんかむかつく。
あたしなんで逃げなかったんだろ、もう。めんどくさい。

たく、ほんとどうしてくれんの。
恨むよゆりしー。

517 : ◆4D0fClhSfA :2006/05/20(土) 07:36:13 ID:fK+qmT60

翌日のお仕事はまあまあだった。
覚悟していたよりもずっと頭の中にゆりしーは現れない。
ゆりしー案外良い子にしてんじゃん。
休憩中のお菓子に手を伸ばしてちらっと思ったら瞬間で
「へへー。ゆりしー、静ちゃんが好きだから良い子にしてるの」
の図が浮かんで速攻消去した。
良い子ならあんなことすんじゃねえ。あんまりあたしを悩ませんな―

―なんて言っても仕方ないのはわかってる。
でも仕方ないことはわかってもむかつくことはむかつくのが人間ってもん。
ラジオのお仕事の前には決着つけなきゃいけないと思う。
このままだと最低な収録を迎えることになる。

一日中死んでないかひやひやしたけど、のりこちゃん経由でメール頼んだらなんとか大丈夫っぽかった。
いや大丈夫かはわかんなかったけど、とりあえずは生きてるっぽい。
返信があるってそういうことだ。あー、良かった。
後でありがとって言っとこ。
メールがきてからは安心して、お仕事を済ませて部屋に帰って今日もテレビの前につまみを広げて呑める。
お酒が美味しいのはいいことだ。

ブログでも見れば生存がすぐわかりそうなもんだけど、ブログ更新してなかったら「はぁああ!?」って焦んないといけないし、
更新してあったらあったであたし絶対、へこんだ日記でもへこんでなくてもイラつくと思う。


518 : ◆4D0fClhSfA :2006/05/20(土) 07:36:58 ID:fK+qmT60
もう、今となってはしたことはいい。
でも相手がゆりしーでそのゆりしーとお仕事があるってことが問題だ。
不幸そうだから打たれ強いとは思うけどこんなことでお仕事を止められたり―

ありえないけど、死なれたりしたらあたしも困る。
仕事が減るし、遺書とか、静ちゃんに嫌われたからとか、静ちゃんを押し倒してしまったので死にますとか書かれたらヤダもうあたし生きてけない。

髪の毛をがしがしとまとめてあぐらをかく。
テーブルの上にはなんとなく置いたままの携帯とキャスケットがある。
ゲームでもしようと思ってたけど、その気にならない。
コントローラーの代わりに携帯をとってメールを、しようと思って止める。
この上返信待ちでイラッイラするのは性に合わない。
もういい。とりあえずあたしが飽きるまでかけてやる。

「逃げんなよ」

ゆりしーの忘れ物を睨みながらコール音を聞く。

一言目が決めていた。

忘れ物があるから取りに来い。

本当にでっかい忘れ物だ。
会ったら言ってやる。
ダメだと思ってヤる前にまずは告れ。人の言うことを聞け。



519 : ◆4D0fClhSfA :2006/05/20(土) 07:38:24 ID:fK+qmT60

随分しょぼくれたモノがあたしの目の前にある。
しつこく電話をしてメールで「いいから出ろ」と迫った結果、ドアの前にコレがいる。
服装は酷くないけどいつも大事にしてる髪の毛が乱れて、隈も酷い。
一応顔は洗ってきたらしく涙の跡はないけど泣いてたのはバレバレ。
大体、泣きたいのはあたしだし。
幽霊だかエイリアンみたいにゆらっと立って、普通に係わり合いになりたくない人みたいになってる。
あたしも普段なら絶対逃げる。
知り合いでも何でも自分で呼びつけたんじゃなかったら逃げてる。

「……入れば?」
「……いいの?」
やっといつもの高い声を聞いたけど、それも掠れてがさがさだった。

「呼んだのあたしだし」
商売道具なのにと一瞬本気でイラっとするけどそういえばこの子、一応プロ意識は無いでもない。
たまに変なところであたしもびっくりするような根性を見せてるからここであたしが怒るのも筋違いだろう。

ぐだぐだ思ったけど、結局結論は「ま、いっか」。
まずはドアを閉めてゆりしーを置いて先に部屋に戻る。

「今日休みだったの?」
まだ玄関先でぐずぐずしてるからふと浮かんだ疑問を投げたら、ちょっと顔を上げて
人間らしくなったゆりしーが「うん」って。

まぁそうだろ。
相変わらず本当にこの子クローズだ。
冷蔵庫を開けてやっぱり中にビールしかないのに顔を顰めてゆりしーに手渡す。

「おじゃまします」
「はぁ」

520 : ◆4D0fClhSfA :2006/05/20(土) 07:39:28 ID:fK+qmT60
ビール貰ってお邪魔します、ってなんかおかしくね?
冷たいビールを温かいココアかなんかの缶持つみたいに両手で大事に持って、であたしの視線に耐えられなくなったのか俯いて一瞬固まる。
でしょ、ビール、今見るのヤでしょ。
あたしもだったよもう、バカ。

「座れば」
「うん」
今度の返事はさっきよりも早かった。
これならちゃんと会話が出来そうだ。
ざっと片付けたばっかの部屋の入り口で居心地悪そうに立っているゆりしーの目の前に勢い良くクッションを置いて、自分はその前に陣取る。
あたしの家のテーブルで二人でこうやって向き合うと丁度、ラジオの収録中と同じぐらいの距離感になる。
ラジオで喋ったのはほんのちょっと前のことなのにすごく懐かしくて変な感じだ。

カシっと軽い音をたててプルトップを引っ張って一口飲んで、やっぱり居心地悪くクッションに座って両手でビールの缶を温めてるゆりしーをじろっと見る。
ゆりしーが縮こまる。

「呑まないの?それ」
「……うん。ゆりしーもうお酒飲まない」
「酔ってあたしをヤったから?」
絶叫するかと思ったけどそれはしないで、息をのんであたしを見てるゆりしーに自分でもすごく意地の悪いことを言ったと思う。
でも撤回しない。
ここで逃げたら無意味だから。

「ごめんなさい」

521 : ◆4D0fClhSfA :2006/05/20(土) 07:42:09 ID:fK+qmT60
「……ゆりしーはさ」
言いかけて、ふと目を上げるとちょっとだけゆりしーが嬉しそうな顔をしたのが見えた。

「あんたなんで嬉しそうなのよ。あたしまだ何も言って無いんだけど」
「あ、うん、ごめん静ちゃん」
「部屋に上げたからって許してもらったと思ってんの?」
「ち、違うよ!!あの、あのね、静ちゃん、あの、ゆりしーね」
まぁ許すも許さないも、別にそういう話じゃないんだけどさ。
半分以上諦めかけてた心境だったからちょっと、次の言葉は意外だった。
ちょっとだけ笑ってゆりしーは言った。

「あの、静ちゃん怒ると思うんだけど……嬉しかったの。
ずっとあんたってゆりしーのこと呼んでたから、ゆりしーって名前呼んでくれて」

嬉しかったの。言って泣きそうになってる。
もう、なんかあたしどうしたらいいのこの目の前のオトメを。
あー、こういう可愛いこと言ったらあたしももてるのかな。
投げやりに思ったけど、そういえばゆりしーってもてるのか聞いたことにないや。むしろ悲惨な話ばっか聞いてるからもてないと思う。

「で、あぁ、まずはこれ」
テーブルの定位置にあったキャスケットをゆりしーに投げて渡す。
ようやくこれを睨まなくてもよくなったと思うとすっきりする。
「あんた―ゆりしー、さ。あたしのこと好きなの?」
「えぇ!!」
今更なのに仰け反って俯いて置いてたビールで顔を隠してリアクション。
顔隠れてないし、もうわかってるし。
わざとかと思うけどわざとじゃないのがわかるのが嫌だ。

522 : ◆4D0fClhSfA :2006/05/20(土) 07:44:09 ID:fK+qmT60
「好ーきなーの?ちょっと」
「……うん」
いつまでたっても話が進まないから聞くとちーーーさな声で返事があった。
自分のことなのにこんなこと聞くの恥ずかしいけど、もうなんか慣れたというかなんというか。

「好き」

でもゆりしーがそれをはっきり言ったので意外だった。
「ごめんね」
「だから、それがなんでだって言ってんの」
「……え?」
「ごめんねって、最後だとか現れないとかヤるとかの前に言うことがあんだろっつーの!
っていうか言ったら聞け!人の話を」

言いたいことをずらっと並べたらゆりしーはぽかーんとした顔であたしを見てた。
弾みで息がきれてぐいっとビールを呷ってため息をつく。
「も、ほんとに。あんたお仕事どうするつもりだったの」
「いや、それは下ろしてもらおうと思ったんだけどそれも……」
迷惑かけるし、貧乏だし、か。
貧乏だしが一番の理由じゃないだろうなと思いながらも、少し安心した。
そこら辺妙に現実的なのがゆりしーだろう。

「これからはまずは好きだって言ってから、相手のオッケーとってからヤんなさい。
基本でしょ基本。後相手の言うこと聞くこと。どういう返事がくるか、わかんないでしょ?」
「……うん」
反省してんのかゆりしーがまたしょぼくれてる。
「それからあんなことして忘れ物するとかお金払ってかないとかどういうこと!?
あたしめちゃくちゃ恥ずかしかったんだけど」
「ご、ごめんなさい」
「あー、もうお金は後でいいから」
神妙な表情からいきなりしまった!と顔に書いて慌てて財布を出そうとするから止める。
うんざりとビールを空にしてからゆりしーをじろっと見る。

523 : ◆4D0fClhSfA :2006/05/20(土) 07:46:02 ID:fK+qmT60
「まぁでもとりあえずは、うん。
あたしも逃げようと思ったら逃げられたし。酔っ払いのすることだしま、済んだことだし」
「うん」

嬉しそうな顔でもするかと思ったらすごくへこんだ顔でキャスケットを揉んでる。
あたしのこと好きなら嬉しい訳ないか。それもそうか。
「あれはもう謝んないでいいから。あたしも恥ずかしいし」
「え、でも」
「もういいって」
「でも、でもゆりしー静ちゃんが嫌がってたのに」
「あぁ!もういいって言ってんの!」
「だって……あれは」
「あたしも言うほどヤじゃなかったからいいんだっつの」
「えぇ!ほ、ほんとに!?」
「大体なんであたしの普段の言動見てて好きだって言ったら嫌われるとか思うの」

自分で言うのもなんだけど普段から女好きって言ってるしスキンシップ過剰だし、ゆりしーのこと可愛いって言ってるのになんでこんなマイナス思考なんだろ。この人。
ほんとに、あたしおかしいんだって。
脳にアルコールが回ってるとしか思えない。
なんでこんなことされてゆりしーのこと嫌いになってないんだか。
なんでこんなめんどくさいことしてまでゆりしー励ましてるんだか。

疲れてきてゆりしーのビールを奪って呑もうとして、それがすっかりぬるくてがっかりする。

小屋の隅っことかでぷるぷるする小動物みたいになってるゆりしーは置いといて冷蔵庫を開けて頭を突っ込む。
そういえば前買ってきてたペットボトルのお茶があったからそれ出して、あぁ、でも冷たいと頭が冷える。

524 : ◆4D0fClhSfA :2006/05/20(土) 07:47:31 ID:fK+qmT60
あたしは今冷静だろうか。
ゆりしーは嫌いじゃない。ただもう、本当に世話のやけるやつだとは思う。
あたし基本的には世話焼きじゃないんだけどな。
頭が沸いてるとしか思えない。

こっちを伺ってたゆりしーにまずあたしの分のビールを渡してそれをテーブルに置くのを確認して、
ペットボトルのお茶を無言で差し出す。
座ったままのゆりしーが立ってるあたしの顔をちょっとおびえた顔で見上げてる。
渡されたお茶をあたしがつかんだままだからこんな顔されるんだけど、はぁ。
ため息をついてじっとゆりしーを見つめる。

世話は焼くよりむしろ焼かれるほうが好きだし、好き放題できないとストレスたまるし。
どうしてゆりしーに付き合ってられるんだろう。
お仕事のためとはいえ本当に心からどうかしてるとしか思えない。
「嫌いじゃないから」
「え」
「だから、ゆりしーのこと嫌ってないから。ゆりしーが好きだって言っても嫌いにならないから、大丈夫」
「し、静ちゃん……良かったよぅ」

それでいいの!?
片手でお茶の端をつかんだままべしょべしょ泣き出したゆりしーを見て唖然とするけど、そういえばそうだった。
あたしが聞いたことが全てじゃないと思うけど恋愛体験は悲惨なんだったこの子。

「あたしがゆりしーのこと好きになるかはわかんないけど、まずは仲直り!ね。ちゃんとお仕事できる?」
「うん」
「ラジオのお仕事も逃げんなよ」
「うん、ゆりしーがんばる」
久々に聞いた気がした「へへーっ」て笑いは、案外悪くなかった。

525 : ◆4D0fClhSfA :2006/05/20(土) 07:50:23 ID:fK+qmT60
「ほら、もう泣かないの」
なんとなくほっとけなくてしゃがみこんで抱き寄せたらふぇえとかいって本気泣きされた。
なんだかほだされちゃったみたいでちょっと複雑だ。
ゆりしーは細いくせに思ったより柔らかくて抱き心地は悪くない。

「静ちゃんやっぱり優しいね」
「でもさー、ゆりしーあんたなんであんなの知ってたの?したことあったの?女子高とか言ってたけど」
「あ、あれは」
「ヤっちゃってたの?」
嬉しそうに抱きついてきてたくせにがばっとあたしから体を離して全身で否定する。
「ち、ちが、ちがうよ!あれは、ゆりしーね、ちょっと押し倒されて」
「はぁ!?」
「そういうこともあったんだよ」
「そういうことじゃねえよ!」
これ以上突っ込むと大変なこと聞きそうで怖くなった。
ったく、なんであたしこんな面倒くさいやつとこんなことに。
ラジオのお仕事を恨む。
体勢がきつくなってきたのでゆりしーの隣に座りなおしてティッシュで顔を拭いてるゆりしーを覗き込む。
酷い顔だ。目も鼻も真っ赤だし、疲れてるオーラ丸出しだし。
でも来たときよりはずっと、普通で可愛い。
別にあたしはゆりしーの顔が好きとかそういうことはなかったはずなんだけどなぁ。
このみとたま姉をしてからどうも、役の感じが残ってるみたいでそれがそもそもの原因だろうか。

「ま、いっか。それにしてもあんたが攻めだったとは」
「う……ゆりしーも攻められたいんだけど」
「あ、ほんと?ならダメだ。あたし達相性悪いね」
「えええええ!ヤダ!やーだー!あ、あの、じゃあ静ちゃんが攻められたいならゆりしーがんばる」
「あーじゃあがんばって」
なんだか疲れてきて投げちゃったけど、なんとなく間違ったような気がする。

526 : ◆4D0fClhSfA :2006/05/20(土) 07:52:42 ID:fK+qmT60
嬉しそうにこっちに懐いてくるゆりしーの好きにさせながらちょっと後悔する。
これからたぶんちょっとウザ……い、かな。
いや、ゆりしー案外調子にのらないから大丈夫か。
とりあえずラジオのお仕事はこれで安心。
収録の日が来てもいい。
時刻はもう0時過ぎ。
「泊ま」
ってく?と聞こうとして、よく考えたら隣にいるのは危険人物だったことに気づいた。

「とま?」
「あー、いや、ゆりしーもう帰んな。明日仕事あるんじゃないの?」
「あ、ほんとだー。うん、わかったー。あの、静ちゃんありがとう。ほんとに、ほんとにごめんね。ゆりしー」
「いいから!もう、ちょ、あんた泣いたら帰れなくなるでしょ」
「あ、うん」

バタバタして荷物まとめてドアあけて気付いて、がしっ!とゆりしーを引き止める。
「ゆりしータクシー呼んだ!?」「あ、でも走ってるから」「呼んでからにして」って押し問答して結局5分後、
仕事の話もしてもう一回「バイバイ」って送り出してドアを閉めた。

「疲れた……」
やっぱり、ラジオと一緒でゆりしーとなにかするとグダグダになるような気がする。


仕事で、そしてたまーにプライベートで。
会うとゆりしーは嬉しそうに「静ちゃん、静ちゃん」って懐いてくる。
たまーに悪戯心で「付き合う?」なんて振るとお仕事中だし否定しながらでも、
「ええ!」と嬉しそうで、でも最近妙にゆりしーが可愛くて……おかしい。
ちょっと、あたし本当に大丈夫か?

微妙なラインにいても相変わらずゆりしーはゆりしーだけど案外楽しい、かもしれない。

527 : ◆4D0fClhSfA :2006/05/20(土) 07:54:28 ID:fK+qmT60
「ちょっと、ゆりしー置いてくよー」
「だから置いてかないでって」
マスカラ良し、アイライナー良し、チークも良し、グロスも落ちてない。
チェックして顔を上げて、大声でせかす静ちゃんに返事をする。
不思議なことにあれからカレーを食べても吐かないでよくなった。拒食寸前だったのに。
好きな人の前でモノとか食べられなかったんだけどな。本当に不思議。
「ほら、遅れるよ」
「わかった、すぐ行く」
静ちゃんはちょっと優しくなった。
前よりちょっと待ってくれる。
「階段で行かないの?」
「嫌だよめんどくさい。ゆりしー行きたいの?」
「んーん、そうじゃなくて」
覗き込んだ階段の先の床はあの日と同じぐらい遠い。

でも、もしかしたら今なら
「ゆりしー落ちても死なないかなって」
思う。
「え、ちょっと、大丈夫?ゆりしー。どっか打った?もう落ちたとか」
「あー!、もう、ないから!落ちてない!」
びっくりしてる静ちゃんは「前にここから落ちてみない?」なんて言った事忘れてるかもしれない。
それでもいいんだ。
ゆりしーはヒロインじゃないし、静ちゃんは恋人にもなってないけど、ゆりしーが好きって言っても嫌いにならなかった。
静ちゃんはすごい。あんなことしたゆりしーを許してくれてたまにくっついてくれる。たまに、たまーにだけど、その、キスも、うん。
前よりも仲良くなれたと思う。

「も、落ちないでよ。ほんとに」
静ちゃんは前も優しかったけど、前よりもさらに優しくなった。


ゆりしーはそれがとても嬉しくて、幸せなのであります。


528 : ◆4D0fClhSfA :2006/05/20(土) 07:58:30 ID:fK+qmT60
せめて朝の内に終わり。長く邪魔してごめん。今度こそ本当にありがとう。

|彡

529 :名無しさん@秘密の花園:2006/05/20(土) 11:32:29 ID:D4wMDcIo
キタ━━(゚∀゚)━━
萌え悶えさせて頂きました
GJであります

530 :名無しさん@秘密の花園:2006/05/20(土) 11:44:28 ID:JMK6ehas
>>528
超GJ!!!!!
めちゃくちゃ良かったよ…!!!萌え死ぬかと思った(´Д`*)
よければまた、あなたのゆりしず話を読みたいです。

531 :名無しさん@秘密の花園:2006/05/20(土) 11:55:16 ID:MRtXt58w
すごい!才能を感じました
他のCPもいつか書いてくれると嬉しいですー

532 :名無しさん@秘密の花園:2006/05/20(土) 14:39:17 ID:qkra4O9V
( ^ー゜)b すご〜〜〜〜〜くGJです!
萌えまくりました。
また、よろしければ書いてください。

533 :名無しさん@秘密の花園:2006/05/20(土) 14:59:44 ID:ALUTrwq5
最近は良作ばかりで萌えますね。

534 :名無しさん@秘密の花園:2006/05/20(土) 18:23:43 ID:YRsAHUF4
そういやSSまとめサイトの話はどうなった?

535 : ◆cVAdsO2Fdk :2006/05/20(土) 21:50:11 ID:CgqEQmKB

別に気にしてるとか、そんなわけじゃない。むしろ、自分ではよくわかってない。
ただ、このメール。

開いた携帯の画面に映る愛ちゃんからのメールの内容は、こんなものだった。

件名:
大丈夫?
本文:
今日の収録、麻衣ちゃん元気なかったけど、大丈夫?
なんだかいつもと感じが違った気がしたの。
体調でも悪かった? あんまりそういう風には見えなかったけど。
でもなにかはわからないけれど、なんだか麻衣ちゃんが元気なかったみたいだったから、
気になったの。
何かあった? 私にできることがあったら、なんでも言ってね。

今日は愛ちゃんと一緒にパーソナリティをやっているストパニラジオの収録だった。
久々のゲストに松来未祐ちゃんがやってきて、いつもより賑やかに収録は終わった。
楽しかった、と思っていたけれど。
他の仕事も終わって、家に帰ってくつろいでいた時に愛ちゃんから来たこのメール、これ
はどういうことだろう。
いつも通りの自分だったと思うし、進行だっていつも通り出来ていた。
何か他に変わったことあったかな……?
ラジオの流れを反芻していて、ひっかかったこと1つ。
終わり間際、愛ちゃんが未祐ちゃんをじっと見つめたあの顔が、頭に浮かんで消えた。
『ストパニラジオの苺大福』という称号を愛ちゃんに決められた未祐ちゃんに、愛ちゃん
が「嫌だった…?」と悲しそうに見つめた表情。
まるでそれが鍵だったかのように、思い出したもう1つのこと。
愛ちゃんが未祐ちゃんの手を握って腕を食べちゃった話。
まぁ、二人は同じ事務所だし、仲いいってことはよいことだよ、うん。

536 : ◆cVAdsO2Fdk :2006/05/20(土) 21:51:27 ID:CgqEQmKB
だからって、別にあんな風に未祐ちゃんを見つめなくたっていいとは思うけど。
あんな顔でじっと見つめられたら、誰だって愛ちゃんの嫌なことなんか出来ないし。
それだけじゃなくて……。

って、私は何考えてるんだか。
とりあえず、愛ちゃんからのメールを少し眺めた後、返信の操作をする。

そう、だって私はいつも通り……だったんだから。


聞こえてきた着信音が、麻衣ちゃんからのメールだって知らせる。
さっき送ったやつのお返事かな?
うん、やっぱり麻衣ちゃんからのメールだ。

件名:
Re: 大丈夫?
本文:
うん、大丈夫だよ。
別に元気だし、機嫌が悪かったわけでもないし、何かあったわけでもないよ。
愛ちゃんの気のせいじゃない?
でも、心配してくれたんだよね。ありがとう。

二回繰り返し見て、眉間に皺が寄っちゃう。
むー、気のせいじゃないよ。それは絶対。
なんでか、はわからなかったし、どうおかしかったのかも上手く言葉にできないけれど。
私が麻衣ちゃんの様子おかしいの、気づかないわけがないよ。
ちゃんとビシッと指摘できれば、麻衣ちゃんは観念して何か言ってくれるかな?
別に言って欲しいわけじゃないけど、いや言ってくれたら嬉しいけれど、でも、言われな
いことより、ごまかされることの方がいやだったの。
なんとなく、このメールにはごまかしっぽい感じがするから。

537 : ◆cVAdsO2Fdk :2006/05/20(土) 21:53:01 ID:CgqEQmKB
えっと、いつ様子がおかしかったんだっけ。
んー、ラジオの時は確かにいつも通り……だったかな?
ゲストに未祐ちゃんが来て、色々はしゃいだのはいつもと違ったところ。
後違ったところと言えば、麻衣ちゃんが最後に姉川柳を詠んだことかな。
でもその後はいつも通りな感じでそのまましめたんだっけ。
あれは二本目の撮りの終わりだったから、ラジオ自体でおかしいところはないのかな。
じゃあ……その後?
ううん、違う。その後も確かにちょっと違ったけど、そもそもラジオの最中でもなんだか
気にかかったことがあったはず……。
なんだっけ、出てこない。とっても大事なことだと思うのに。
思い出さなきゃ。とても大切なことを。忘れたままで放っておいたらダメだって、頭が叫
んでるような気がする。でも、出てこない。もっとしっかり思い出さなきゃ。
麻衣ちゃんが変なことを言ったとか? ううん、多分そんなことはないと思う。そうだっ
たら、みんなで笑ってるか引いてるかだと思うし。
今回は未祐ちゃんが色々話してくれて、未祐ちゃんの話で笑ったりとかしてい……
あ。
そうだ。麻衣ちゃんが言ったんじゃなくて、未祐ちゃんが言ったんだ。
麻衣ちゃんのおかしかったところは言葉じゃなくて、目だ。
うん、思い出した。
あの、どこか悲しそうな目が、直後笑顔だったから、余計頭に引っかかっていたんだ。
今まで一度も見たことがないあの目が気になって、終わったら麻衣ちゃんに聞こうと思っ
てたんだけど、麻衣ちゃんはすぐに次の現場に行っちゃって……。
それとももしかしたら、私が気づいていなかっただけで、私が見ていなかっただけで。
前から麻衣ちゃんはあんな目を、たまにしていたのかな……?

すぐには返事を出さないで、携帯を閉じてベッドの上に置いておく。
私はというと、ベッドの上で膝を抱えて座ってる。
どうして麻衣ちゃんはあんな目をしたんだろう。ほんの一瞬だとしても。

538 : ◆cVAdsO2Fdk :2006/05/20(土) 21:54:48 ID:CgqEQmKB

――After next recording

今日はストパニラジオの収録で、さくらちゃんと一緒だった。
愛ちゃんに友達減っちゃって……って話した後だったのに友達って言ってくれて、すっご
く嬉しかったなぁ。
なんだか前の未祐ちゃんの時もだけど、すごくはしゃいじゃった、お仕事なのに。
でも、なんだか愛ちゃんがいつもより静かだった気がする。
まぁ、ゲストさんを立てるのはもちろん必要なことだけど、にしては静かで、話は私とさ
くらちゃんにお任せって感じ。進行とかの部分ですっと進めてくれたけど……。
なんだろう、なんだかいつもと違ってらしくない感じがしたなぁ。
収録前の打ち合わせでは別に変じゃなかった、と思うんだけど。
他のラジオのゲストに行った、とかじゃなくて、私たちのラジオで、あの様子はやっぱり
変な気がする。
んー、メールで聞いてみようかなぁ。
なんとなく携帯を手にとって、メールの画面を表示させる。
ふと、デジャブ。
なんとなくひっかかった記憶のままに、受信済みメールから、昔のメールを探す。
愛ちゃんから送られてきたあのメールは、2週間くらい前で……。
私はメールをたくさんするタイプだから、もしかしたら残っていないかもと不安になった
けれど、なんとかそのメールは残っていた。
それは丁度、前回のストパニラジオを収録した日に送られてきたもの。

私の様子が変だったって、何かあったのって愛ちゃんが聞いてきたメール。

539 : ◆cVAdsO2Fdk :2006/05/20(土) 21:55:42 ID:CgqEQmKB
まるで、あの時と真逆。
愛ちゃんからのこのメールをまた見て、なんとなく気づいた。
きっとこれから愛ちゃんに何かあったのってメールしたら、あの時私が愛ちゃんに返した
メールと同じようなメールが返ってくるって。
じゃあ考えてみよう。
愛ちゃんは、あのメールが私から返ってきて、どう思ったんだろう?

あの後、メールは返ってこなかったけれど、何も考えなかったわけがない。そのまんま信
じたわけじゃないだろう。
だって、きっと私も愛ちゃんからあんなメールが返ってきたって、文面通りに受け取らな
いから。
でもその後、他の現場で会った時は普通……だったよね、うん。
私が変だなって思ったのは今日だけだったし。
さくらちゃんとは愛ちゃんも仲いいし、そんなぎこちなくなる理由にはならないと思うん
だけどなぁ。
でもさくらちゃんと一緒にした収録は、ほとんどそういう感じだったし。
未祐ちゃんの時はそんなことなくて、むしろ愛ちゃんと未祐ちゃんがすごくはしゃいでた
記憶があるんだけど。
この違いってなんだろう?
そもそもどうして私は前回、変だったんだろう。
なんとなくだけど、もしかしたらって程度に、自分で理由、気づいてたんだよ……ね。
忘れようとしていたけど。
愛ちゃんはそれに、思い当たったのかな?
どうなんだろう。今日の自分のおかしさに気づいていたら、気づいたかも。
でもそれって、前の私と今日の愛ちゃんが同じ理由って前提だもんね。
そんなわけ、ない。きっとない。

540 : ◆cVAdsO2Fdk :2006/05/20(土) 21:56:21 ID:CgqEQmKB
実はこの後続くんですが、一度に投下するには長いのでわけました
続きは読みたい方がいれば、ということで

前のにGJやコメントありがとうございました
今回も途中までなのですが読んでいただきありがとうございます

541 :名無しさん@秘密の花園:2006/05/20(土) 23:15:46 ID:JMK6ehas
ぐっじょぶ!!!
続きが気になるよ!
頼みます(´Д`*)

542 :名無しさん@秘密の花園:2006/05/20(土) 23:21:31 ID:qkra4O9V
だ〜か〜ら〜、途中で止めないでくださ〜い
すぅぅぅぅごぉぉぉっく気になって仕方有りません。


543 : ◆cVAdsO2Fdk :2006/05/21(日) 00:54:25 ID:OH/5kakH
長さを気にして止めたのですが、気になるという方がおられたので…

>>539のつづきです

544 : ◆cVAdsO2Fdk :2006/05/21(日) 00:55:13 ID:OH/5kakH
不意に、手に握ったままだった携帯が鳴る。
ぱっと開いてみれば、新着メール1件の表示。
もしかして……、なんて淡い予感と共に開いたら、やっぱり愛ちゃんからだった。

件名:
今日の収録
本文:
自分ではよくわからないんだけど、なんだか私、変じゃなかった?
あの時は特に気づかなかったんだけど、お家に帰ってきて一人になってから、
なんだか自分が変だったような気がしてきちゃったの。
さくらちゃんは変に思ってなかったかな?
麻衣ちゃんはどう思った? 私、変だったかな?

……これは、気づいてない。
自分がどこか変だったかもってのは気づいたみたいだけど、理由に気づいてない。
ということは、前回の私が変だった理由も、気づいてないのかな。
って、同じ理由って根拠ないのに、どうしてそう決めつけちゃうんだろう。
うん、本当はわかってる。
愛ちゃんも、前の私と同じ理由であって欲しいって、そう思ってるからだ。
それが私の望みだから。

迷った末に送った返事のメールは、こんな感じだった。

件名:
なんとなくなんだけど
本文:
ねぇ、愛ちゃんは覚えてるかな?
前のストパニラジオの収録の後、愛ちゃん私にメールくれたよね。
なんだか私の様子がおかしかった気がするって。
今日はあの時と正反対だね。

545 : ◆cVAdsO2Fdk :2006/05/21(日) 00:56:26 ID:OH/5kakH
本当はあの時、自分で自分がおかしいって気づいてたの。
愛ちゃんからのメールの返事ではとぼけちゃってごめんね。
でも、それは私の理由であって、愛ちゃんの理由とは多分違うから。
だから、理由まではわからないけど。
でもちょっとだけ、愛ちゃんがいつもより静かだったような気がした。

送っちゃってから悩む。
送っちゃって良かったのかなぁ。
勘違いとかされちゃうような文面になってなかったかなぁ。
って、すぐに返事きた。早いなぁ。
携帯持って、じっと待ってたのかな?

件名:
そうなのかな
本文:
静かっていう程度だったら、さくらちゃんに変とか思われてないかな?
ちょっとだけ、ほっとしたよ。
でもやっぱり私、ちょっと変だったんだね。
自分で理由とかわからないけど、落ち着かなかったのは覚えてるんだ。
それと、私と同じじゃなくてもいいから、
麻衣ちゃんはどうしてあの時変だったか、理由教えてくれない?

最後の一文を見て、きちゃった……と激しく憂鬱。
うぅ、ここで断ると愛ちゃん悲しむだろうしなぁ……。
どうしよう……
悩むし、言ってしまえば楽になれるだろうって気持ちもあるけれど。
言っちゃイケナイ、よね。
言ってしまうことで、本当は違ったかもしれない愛ちゃんの理由が同じってことにされた
りするようなことが、もし万が一あったらとんでもないことだし。
こんな醜いものを、愛ちゃんには知られたくない。


546 : ◆cVAdsO2Fdk :2006/05/21(日) 00:58:11 ID:OH/5kakH

ベッドの上に座り込んで、携帯を握りしめて待つこの時間。
どきどきして、緊張が収まらない。
内容が内容ってことが一番の理由だけど、やっぱりすぐに返事返ってくるかなーとか、す
ぐ返ってきたら、他のことより優先されてるかな、とかなんとなく嬉しくなるから。
麻衣ちゃんからの返事は思ったよりも早かったんだと思う。
けど、私はその1秒1秒が長く感じられて、早かったかっていうとよくわからない。

件名:
ごめんね
本文:
言えない

飛び込んできた文面は、とてもとても短くて。
理由も書いていないメールは、私じゃダメだって拒絶されたようで、悲しくなった。
次々に涙が溢れて、頬を伝っていく。
お風呂入った後でよかった、なんて的はずれな感想が出てきたりして。
携帯を抱きしめたまま、ずっと泣き続けた。


次の日のお仕事は、なんだか気持ちが晴れないままだった。
朝起きた時は目が腫れていて、メイクが大変だったし、顔を合わせたマネージャーさんも、
うわぁ…って顔してたなぁ。
凡ミスも多かったけれどなんとか終わらせられたのは、ある種奇跡みたいなものだと思う。
お仕事の最中、役に入っていない時なんか、麻衣ちゃんの顔が浮かびそうになって、浮か
べちゃったらきっと泣くって思って、がんばって忘れようとした。


547 : ◆cVAdsO2Fdk :2006/05/21(日) 00:59:58 ID:OH/5kakH
でも、麻衣ちゃんを忘れようと意識しなきゃいけない自分がイヤだった。
それが自己嫌悪に繋がって、気分は晴れないままだった。

この日麻衣ちゃんと一緒のお仕事がなかったのが、救いだったのかはわからないけれど。
とりあえず私の心情としては最悪で、必ず来る麻衣ちゃんと顔を合わせる時が怖かった。
きっとあれはただ言いたくないって、それだけだったのはわかるよ。
だけど、私にとってあのメールは、私のことを拒絶された気持ちになったから。
麻衣ちゃんとは仲良しのお友達のつもりでいたけれど。
踏み込み過ぎてはいけないところに踏み込んじゃったのかもしれない。
調子に乗りすぎていたのかな。あのPVとか、色々あって、はっきりしていたわけじゃない
けれど、もしかしたらって……思っていたのは、やっぱりいけなかったんだ。
胸の奥の気持ちは、ちゃんと蓋をしておこう。
それから少し、距離を置こう。
また前のように笑いあえる仲になるまで。



どうしてなのか、落ち着かなかった。
あの後、愛ちゃんからの返事は一切なかった。
やっぱりちょっと言い方がきつかったのかな? なんだか不安だなぁ。
でも、愛ちゃんに聞くにしても、どう聞けばいいのかわからない。
また教えてと言われてしまった時、どうしたらいいかわからなくなるし。
愛ちゃんに悪いところはなくて、ただ私が悪いだけだから。
愛ちゃんがマイナスに取ってないといいんだけど……あの文面だと厳しいかなぁ。
そんなことを考えて、二日が過ぎ、別の現場で愛ちゃんと一緒になった。
「おはよう」
「おはようー」
挨拶を普通に交わして、何もなかったのような会話をして……。
って、何もなかったわけなんかないよね。
愛ちゃんがいつも通りを意識してるのがすぐわかった。

548 : ◆cVAdsO2Fdk :2006/05/21(日) 01:02:31 ID:OH/5kakH
だから愛ちゃんに調子を合わせて、私もいつも通りに振る舞った。
やっぱり、気にしちゃったのかな。もっと気を使って言葉を選べば良かった。

お仕事の最中、愛ちゃんが離れている隙に愛ちゃんのマネージャーさんが声をかけてきた。
「あの、清水さんに何かあったかわかりませんか?」
「愛ちゃん、どうかしたんですか?」
私の問いかけに、マネージャーさんは一瞬迷って、でも私に言ってくれた。
「昨日の朝に会った時、目をすごく腫らしていて、仕事でも何度もやり直しになったりし
ていて。今日はマシみたいですけど、やっぱり落ち込んでいるみたいなんです」
「どうして私に?」
「中原さんは清水さんと仲がいいですし、一昨日は二人同じ現場でしたから、何かご存じ
かな、と思いまして」
本当に愛ちゃんを心配してるマネージャーさんに申し訳なかった。
けれど、言えるわけもない。
「すみません、私にはわかりません」
「あ、いえ、ならいいんですよ」
同じように落ち込む私に、マネージャーさんは慌てて気遣ってくれた。
「ただ、もし聞けるようでしたら、聞いてみてください。無理ならいいですから」
「はい、わかりました」
「できれば清水さんの力になってあげてください」
そう言って、マネージャーさんは離れていった。

力になって……あげられないよなぁ。
だって、私が原因なんだもん、多分。
うーん、でもそっかぁ。愛ちゃん、泣いてたのか……。
どうにかしないと、このままじゃ絶対良くないよね。
話していても、愛ちゃんが無理をしている感じがして、申し訳ない気持ちになる。
でもどうやって切り出せばいいんだろう。
やっぱりあのことは、言うべきなのかな……?
でも、うん。
愛ちゃんがああいう辛そうなままでいるよりは、よっぽどいいはずだから。

549 : ◆cVAdsO2Fdk :2006/05/21(日) 01:03:33 ID:OH/5kakH
はい、あと(多分)1回分くらいつづきます
とりあえず、つづきは一度寝て起きてからにしますので、安心して寝てください

続き気になるって言ってくださった方、本当にありがとうございます
もっと気になるところ止めになった気はしますが(苦笑

550 :名無しさん@秘密の花園:2006/05/21(日) 01:13:57 ID:Vu+StkWO
>>540
ちょ、また生殺しかよw
でもまぁ、GJ!
先の展開がどうなるか、楽しみに待ってるよ。


551 :名無しさん@秘密の花園:2006/05/21(日) 09:57:09 ID:4RB+gs8A
>>540 続きに期待。ガンバレ

と言いながら、◆cVAdsO2Fdk 氏が起きてこないので
ちょいと前座。一応、
>>485-488
に応える形で、例のシリーズから植田×中原ふぃーちゃりんぐ清水

552 :八組目:2006/05/21(日) 09:58:43 ID:4RB+gs8A
植田佳奈「たのもう! 8番、植田佳奈、」

百合山 「来ましたねー、ネットから来た渡り鳥。」
司会  「噂は本当でした。本当に旗を持っています。」
百合山 「百合の旗なんてどこで売ってるんですかね。」

司会  「ところで・・・植田さんはお一人のようですが?」
植田佳奈「あたしの相手なら、あそこにおる!」
司会  「あの中に、とおっしゃいますと?」
植田佳奈「愛ちゃん。オランダ行くか?」

司会  「これは意外なご指名がかかりました。」
百合山 「ある種、宣戦布告ですよね。・・・予想通り、中原、動きます。」

中原麻衣「佳奈。それはどういう意味かしら?」
植田佳奈「きみには関係無いね、麻衣。」


清水愛 「じゃぁ、勝負しましょう!」
中原麻衣「・・・愛ちゃん。」
植田佳奈「どっかで聞いたセリフ、しかも、すんごく近くで聞いてた記憶が」

百合山 「なんだか、訳のわからない展開になって来ました。」

553 :八組目:2006/05/21(日) 09:59:36 ID:4RB+gs8A
清水愛 「じゃぁ二人には、制限時間2分で、お互いに告白して貰います!」

中原麻衣「いや、佳奈相手に、それは無理だから。」
植田佳奈「・・・ウチはできるで。」
中原麻衣「え?」

司会  「これまた、意外な展開に。では告白タイム、スタート!」

植田佳奈「長い髪が超綺麗な麻衣。柔らかそうな唇が超キュートな麻衣。」
中原麻衣「ちょっと、やめなよ、佳奈。」
植田佳奈「事務所で毎日会うほど近くにいて、実は一番遠くにいる麻衣・・・」

中原麻衣「なに? あんた、泣きよるん? ・・・なんで? なんで?」
植田佳奈「知らんわ。勝手に泣けてくるんや。」
中原麻衣「佳奈・・・」

植田佳奈「なぁ、何でこうなったんやろ、うちら・・・。
     『ちゃん』付けで呼び合ってた頃には、もう戻られへんの?」

中原麻衣「・・・呼び捨てで、何でも言い合える仲が、いけないって言うの?」

植田佳奈「私達は似てる所も多くて、麻衣と話すのは、確かに楽しい・・・。
     だけど、時々、鏡を相手に喋ってる気がして、切なくなる。」

中原麻衣「言う事は解る気がする・・・けど。それは・・・なぜ?」

植田佳奈「多分・・・。近過ぎる私達は、本当は省略してはいけない部分まで
     省略して話す間柄だから・・・。
     本当にかけて欲しい言葉は、いつまで待ってても・・・来ない。」

中原麻衣「だから、なんで泣くのよ、佳奈。」
植田佳奈「泣いてんのは、麻衣もいっしょやろ!」

554 :八組目:2006/05/21(日) 10:00:34 ID:4RB+gs8A

中原麻衣「・・・だけど、ごめん。佳奈は、どうやっても私の中では三番目。
     今の私には、佳奈の言う『ちゃん付け』で呼ぶ二番の人がいるし、
     一番はやっぱり恋人のための予約席だから・・・。」

植田佳奈「そこや! 何で、そこで愛ちゃんを『二番目』にする?」
中原麻衣「それは、・・・愛ちゃんは『妹』だから。」
植田佳奈「それがおかしい、言うねん!」

中原麻衣「だって! 私じゃ、どうあがいても、愛ちゃんを幸せなママに
     してあげられないじゃない! だからそれは、一番にできない!」

植田佳奈「アホか。そんな事を真面目に考えてたわけ? ウチもアホやけど、
     麻衣は遥かに上を行くアホや。言ってみればアホの艦長や。」
中原麻衣「アホアホ言わないで。」

植田佳奈「麻衣がそんな所に線を引く付き合い方をするせいで、愛ちゃんや
     ウチが、どれだけ傷ついたか解ってんの?」
中原麻衣「傷つくって・・・佳奈」
植田佳奈「・・・そんな事もあった、ってこと。気にせんといて。」
中原麻衣「佳奈・・・」

植田佳奈「・・・なぁ、麻衣。最初から制限付きの好意が欲しい人なんて
     どこにもいないと思うよ。誰だって永遠は誓えないけど、人は
     それでも永遠を誓う。・・・それが気持ちやん?」

中原麻衣「そういう事を言ってくれる人は、いなかったかな・・・。うん。
     佳奈、ありがとう・・・って言うわ。」

555 :八組目:2006/05/21(日) 10:01:06 ID:4RB+gs8A

植田佳奈「たまには、愛ちゃんじゃなく、あたしで萌えてみるか?」
中原麻衣「それは無理。・・・だけど、感謝は形にしておくわ。」

百合山 「ひゅー」
司会  「中性的なルックスと評される事もある中原選手、クールな視線で
     植田選手を見つめ、軽く・・・」

ちゅ・・・

植田佳奈「かかった!」

中原麻衣「ん〜! ん〜! ぷは・・・離して、佳奈」
植田佳奈「離すか。」

ぶちゅ〜〜〜

司会  「中原、撃沈〜!」


清水愛  佳奈ちゃんったら長過ぎだよ〜! 
     でも、一回だけって言ってたし、幸せそうだし。今日はいいよね。

     私は呼び捨てで呼ばれる佳奈ちゃんが羨ましいって思ってたけど、
     佳奈ちゃんは逆に私が羨ましかったんだよね。

     うん。大事にされてる、って思えるよ。
     麻衣ちゃんのこと、もっと好きになれそう。
     ・・・ありがとう、佳奈ちゃん。

556 :名無しさん@秘密の花園:2006/05/21(日) 10:01:57 ID:4RB+gs8A
だから限界なんだって。本当にありがとうございました。

557 : ◆cVAdsO2Fdk :2006/05/21(日) 13:29:07 ID:OH/5kakH
おはよーござーます……
いやぁ、太陽が高く昇っていて、いい朝ですねぇ(えー

私が起きるのが遅かったため、>>551にお気遣いいただきありがとうございます。
いや本当、他の職人さんも気にせず投下していただけたらいいので。
9組目はぱっくぎかなー?とwktkしながら待ってますよ。

さて、>>548の続き、いきます。

558 : ◆cVAdsO2Fdk :2006/05/21(日) 13:30:30 ID:OH/5kakH
お仕事の後、麻衣ちゃんに家に遊びに来ない? って誘われた。
断ろうって、思ったんだけど……。
じーって見つめてくる麻衣ちゃんの目が、なんだか切実っぽかったから……。
距離を置こうって決めた直後に、相手の家に遊びに行くって、絶対距離取ってないと思う
んだけど、……断り切れなかったよぉ。
むぅ、やっぱり決意は甘いのかなぁ。
麻衣ちゃんは気にしてないんだろうけど、やっぱりまだ普通に接するのは、こう、なんと
いうか……難しい。
現場で、お仕事の合間に話すくらいなら、時間も限られてて平気だろうって思っていたけ
れど、お家で……ってなると、タイムアップは期待できない。
麻衣ちゃんと話すのが辛いって思う時が来るなんて、想像したこともなかったよ……。


マネージャーさんの言っていたことが気になって、誘ってみたはいいけれど。
愛ちゃん、なんだか困ってたようだったなぁ。OKはしてくれたけど。
どう、切り出せばいいのかな。
一度は断ったことなのに。向こうからまた聞かれたわけじゃないのに。
それに、あんなこと言うなんて……すっごく抵抗がある。
愛ちゃんのためを思って、自分に対する甘えを無くす必要があるんだけど。
逆に呆れられたり嫌われたりしないかっていう不安が、ずーっと肩に乗っかっていて。
こうなったら、とりあえず言ってしまうしかない。問題は、どのタイミングか、で。


家に愛ちゃんをあげて、うちのワンコが愛ちゃんに飛びかかってぺろぺろ顔を舐めてるの
を横目に見ながら、私はずっと、どのタイミングで言うかばかり考えていた。
ワンコがいてちょっと助かった。
つかちょっと、そこ! 熱烈すぎるから! 愛ちゃんにばっかり懐きすぎ!
あ、やばい。今自分でもやばいって思った。
でも愛ちゃんはワンコに夢中で、こっちは見てない。
うん、まだ大丈夫。まだ知られていない。
……いや、私から言うために家に呼んだんだけど。

559 : ◆cVAdsO2Fdk :2006/05/21(日) 13:31:25 ID:OH/5kakH
なんとかワンコを愛ちゃんから引き離して、テーブル挟んで座って、ようやくお話できる
体制に。
でも、愛ちゃんが気まずそうに視線を彷徨わせている。
別に取って食おうってわけじゃないんだから。
愛ちゃんをそうさせたのが私のメール(多分)なのは、確かにしょうがないんだけど。
どう言い出そうか、なんてずっと考えてたけど何も浮かばないし。
もう思いついたまま口にするしかないよね。
「そんなにうろたえなくてもいいよ」
「え?」
「いや、なんだかさっきから気まずそうだから」
「気まずくなんて…ないよ?」
必死なの伝わってくるんだけどなぁ。
でも、当人だったらわからないんだろうし。
「マネージャーさんからね、聞いたの」
「何を?」
「昨日、愛ちゃんが目を腫れさせて、落ち込んでたって」
聞いたままを言ったら愛ちゃんってば、やばって顔した。
知られたくなかったんだろうなぁ。すごくいつも通りに振る舞おうって、がんばってたみ
たいだし。
「何があったのって、私が聞くのはおかしいよね」
愛ちゃんの答えは待たず、私は続ける。
「あのメール、もしかして気にした?」
「ううん」
返ってきた答えは間を置かず、でもこわばった声。
愛ちゃんのこんな声、お芝居以外で聞くのは初めてだな。
「嘘」
びくって、愛ちゃんが反応したような気がした。
かわいそうにすら見えるけど、ここでやめる方がかわいそうなことになるから。
……多分。
「あのね、言えなかったのは」
「いいから!」

560 : ◆cVAdsO2Fdk :2006/05/21(日) 13:32:53 ID:OH/5kakH
言おうとした矢先、愛ちゃんが声を上げて私の言葉を遮った。
「本当に、なんでもないの。だから、言わなくていいんだよ」
そう言って見せた愛ちゃんの表情は、今にも泣き出しそうな顔だった。
そんな顔するんなら、聞いてくれればいいのに。
愛ちゃんはマイペースだけど、相手のことを優先しちゃうところが結構強いから、きっと
聞かないとか決めたのかな。
まともに聞かせようとしたら、多分また遮られるんだろうなぁ。
「嫉妬したの」
あのね、なんて前置きはもうなし。
そんなことしたらすぐにいいって言われるから。
愛ちゃんをそんな顔にさせるくらいなら、迷ってなんかいられない。
「愛ちゃんが未祐ちゃんとすごく楽しそうに話してるのに、ヤキモチ妬いたの」
愛ちゃんは面食らって、ぽかーんってしてる。
「愛ちゃんが未祐ちゃんに、じって見つめた時があったでしょ。あの時なんか、どうして
私にあんな視線を向けてくれないのかなって思ってた」
「はっ!? え、え、えーー?」
ようやく我に返ったっぽい愛ちゃんは、動転を言葉にならない声にしていた。
「愛ちゃんにそんなの知られたくなかったから、言えないってメールしたの。ごめんね、
愛ちゃんがそんな風に悩んだりするんだったら、言えばよかった」
「え、あ、いや、そんなことはいいんだけど……」


麻衣ちゃんが言ってくれた理由は、私の想像の範囲外で、あぁもう混乱しちゃってどうし
よう。
別に麻衣ちゃんに拒絶されたわけでもなんでもなくって、別に踏み込みすぎたわけでもな
かったんだ。
どうしよう、嬉しいよ……。
なんだか昨日や今日堪えていた涙が、限界を迎えたみたいにどんどん零れてきて。
「愛ちゃん?」
目の前の麻衣ちゃんが戸惑ってしまうくらい、私は泣き出してしまったの。
泣きやまなきゃって思ったんだけど、自分ではもう止められなくって、あぁもうどうしよ
う。麻衣ちゃん困らせちゃうよ。

561 : ◆cVAdsO2Fdk :2006/05/21(日) 13:33:57 ID:OH/5kakH
泣きながらそんなことを思っていたら、後ろから抱きしめられたの。
「堪えなくていいよ」
耳元で聞こえた麻衣ちゃんの声に、麻衣ちゃんに抱きしめられてるってわかって。
ますます涙が止められなくなっちゃった。

ようやく涙が止まって、気づけばずっと麻衣ちゃんに後ろから抱きしめられて、頭を撫で
られていたの。
「ごめんね、麻衣ちゃん」
「何が?」
「えっと、泣き出して?」
あってるかなーって思いながらだから、疑問形。
あと気を遣わせてとか? いやそもそも、変なこと聞いて?
「別にいいよ。むしろ、大歓迎」
「へ?」
「だって、愛ちゃん、一昨日の夜は一人で泣いてたんでしょ?」
麻衣ちゃんに言われて、あの夜のことだって思って頷く。
「それよりは私の前で泣かれた方が、ほら、慰めようがあるじゃない?」
「慰めよう?」
「こうやって抱きしめたりとか、頭を撫でたりとか」
あう、改めて言われると、結構恥ずかしいような……。
「それよりさ、その……イヤだなーとか、呆れたりとかしなかった?」
「なにを?」
「私が嫉妬したっていうの」
「ううん、嬉しかったよ。どうして?」
困ったように言う麻衣ちゃんの様子が不思議で、私はじっと麻衣ちゃんの答えを待った。
「いや、愛ちゃんはイヤかなぁ、とか。変なこと思ってるって思われたりしないかなって
考えて、言えなかったんだけど……」
そっか、麻衣ちゃんも不安だったから言えなかったんだ。
なら、ちゃんと思ったことを伝えなきゃ。

562 : ◆cVAdsO2Fdk :2006/05/21(日) 13:35:31 ID:OH/5kakH
「ううん、すっごく嬉しかった。イヤなんかじゃないよ?」
「こう、心が狭いとか」
「んーん、別に」
「だって私、さっきうちのワンコにも嫉妬したもん」
「えー、どうして?」
「だって、さっき愛ちゃんにすごいじゃれついてたでしょ? 顔とかぺろぺろ舐めて。そ
れがすっごく羨ましくって」
えー、麻衣ちゃん、それが本当ならすっごくカワイイよー。
「何? 麻衣ちゃんも顔舐めたい?」
「んー、それは別にいいや」
言うなり、麻衣ちゃんにぐるって後ろを向かされて、ちゅって……キスされて。
「こっちがいい」
そう言う麻衣ちゃんはすっごくきれいな笑顔で。
あうー、私が照れるよー。
私はなんとなく後ろ、麻衣ちゃんの方にちゃんと向き直って、麻衣ちゃんの顔をちょっと
下からじっと見つめる。だって、麻衣ちゃんの方が身長高いし。
「えっと、ワンちゃんはたくさんしてたけど、麻衣ちゃんは一回でいい?」
うー、すっごく恥ずかしいこと今言ってるよね、言ってるよね!?
でも、あう、そのぉ……、麻衣ちゃんに、そんなに嫉妬しなくていいんだよって、伝えた
いし。


そんなことを上目遣いで言ってきた愛ちゃんは、顔が真っ赤で、でもじっとこっちを見つ
めてきて。
なにこの子どうしてこんなにかわいいの!?
ちょっと、こんなこと言われたら誰だって愛ちゃん好きになっちゃうじゃん!
「そういうことって、他の人にも言ったりするの?」
「え!? 言わないよー、麻衣ちゃんだけだよ」
本当に恥ずかしそうに否定する愛ちゃん。
よし、この子は私の。絶対誰にも渡さない。
そっと愛ちゃんをまた抱きしめて、離さない、なんて子供みたいなこと思って。

563 : ◆cVAdsO2Fdk :2006/05/21(日) 13:37:21 ID:OH/5kakH
「麻衣ちゃんはもういいの……?」
「よくない」
言いながら、また愛ちゃんに軽くキスをして。
あと何回くらいしようかな、なんて思いながらまたキスをした。
「あのね、あんまり他の人をじっと見つめちゃダメだからね?」
「う、うん。わかったよ?」
あ、意味わかってないなぁ。不思議そうに頷いてる。
「愛ちゃんに見つめられたら、誰だって愛ちゃんのこと好きになっちゃうから、ダメだよ?」
「んー? そんなことないと思うけど……」
あ、信じてない。疑ってるー。
「私がまた嫉妬しちゃうから、あんまりしないで?」
「う、うん……」
そう言ったら照れちゃったみたいで、愛ちゃんは真っ赤になりながら、でもぎゅって私の
服を握りしめてる。
「好きだよ、愛ちゃん」
言って、またキスを。
真っ赤で今にも煙を出しちゃいそうな愛ちゃんは、一体何回までならキスに耐えられるの
かなぁ、なんて考えながら、きっと止められないだろう自分を自覚してる。
でも、あんなこと言われて、どうにかならないでいられてるんだからいいよね。
「えっと、……私も好きだよ?」
顔を真っ赤にしながら、それでも微笑みながら言ってくれる愛ちゃん。
ノックアウト。もうダメ。どうにかなっちゃう。もう絶対。
「愛ちゃん、今日は泊まりね?」
「え?」
「一晩中キスするから、帰らせないよ」
言った直後の愛ちゃんはしばらく固まっていたけれど、やがて本当に小さく、こくんと頷
いてくれた。


「あれ? 私どうしてさくらちゃんの回の時、変だったのかなぁ?」

END

564 : ◆cVAdsO2Fdk :2006/05/21(日) 13:37:58 ID:OH/5kakH
以上で終わりですー
初めから終わりまで、読んでくださった方ありがとうございます。

秘密ドールズ発売まであと3日
みなさん今週もがんばりましょう。

565 :名無しさん@秘密の花園:2006/05/21(日) 14:53:24 ID:6jENow/U
ありがとう、貴殿のおかげで今週も俺は幸せだ

566 :名無しさん@秘密の花園:2006/05/21(日) 15:04:38 ID:wKfJUHt4
G.Jです。
おかげで、フィルタ強化できました。
よしこれで秘密ドールズが手元に届けば完璧だ!!


567 :556:2006/05/21(日) 15:13:36 ID:4RB+gs8A
>>564 完結乙
>愛ちゃんは、一体何回までならキスに耐えられるの
この一句に、個人的に凄く反応した

一人称複数回反転系は、明示的な切替サインがあった方がいいかも

>9組目はぱっくぎ
人の興味を松来未祐みたいに言わんで下さい(笑)

568 :名無しさん@秘密の花園:2006/05/21(日) 15:22:24 ID:Vu+StkWO
>>556
GJ!
何この小芝居?とおもったら良い話に急展開。
いやはや、9組目も楽しみに待ってます。

>>564
GJ!
生殺しにされた甲斐があった!
思う存分に悶えさせていただきました。
ごちそうさまです。

569 : ◆cVAdsO2Fdk :2006/05/21(日) 16:21:49 ID:no9xA/4U
みなさんGJやコメントありがとうございます。

>>568さん、生殺しにしてすみませんでした。
>>567さん、明示的な区切り、今後は使うようにします。アドバイスありがとうございます。
9組目は、このスレ的にあとはぱっくぎあたりかなーと思っただけです。
あとあの一句、別に裏の意味とかないですからね?(笑
キスし続けたら、愛ちゃんは真っ赤になって気絶したりしないかなっていう心配ですので。

それから本スレ621さん
(こっちでレスしちゃっていいのかな?見ておられるかな?)
すごい妄想する人がいるなーって楽しく見ていたら、
なんだか見覚えのある鳥が指名されていて、思わず過去の自分のカキコ確認しました(笑
昨日のアニスパはなんとか聴くことが出来たんですが、
他のラジオや声優雑誌は全然聴いてない・見てないのでよくわかりません。
(声優雑誌立ち読みできないんだよ!)
ですがその妄想からテキトウに書くのは(雑誌とかの記事からずれるだろうけど)できるので、
時間かかるかもしれませんが、お待ちいただければと思います。

あ、雑誌とかでこういうやり取りしてたよーとか、そういう情報待ってます。
(うpってくれる神も待ってます)

作品投下じゃないのに長々書いて本当にスミマセンでした。

570 :名無しさん@秘密の花園:2006/05/21(日) 20:59:24 ID:rAE8m+HH
>>564
GJ!
しかし、なんでこうも当て馬が似合うんだみゆみゆw

571 :小話『Girl-friendship』:2006/05/21(日) 21:46:44 ID:R91GO5Zu
あの新聞記事の騒動が元で、事務所から「少し休むように」と言われた。
休養の名を借りた『謹慎』だ。
怒ってなんかいない。だって、あの新聞なんだし、事務所だって仕方がなかったのはわかるから。
日が明けて、家で一日中、ボケーッとしていた。
夜、携帯の音で我に返った。
「…静?」
『I love Hitomi! 永遠の古女房より』
そして、次々と来るメール。
「綾ちゃん?」
『また麻美の取り合いしようね!byあやちー』
「有佳…」
「どらごんデンタルクリニック、ご来院をお待ちしております by院長代理ゆか」
「あけのん…」
『まーたんとボクとナバさんと、三角関係しようね! byあけのん』
「麻美子…」
『ずっと待ってるからね!ラブラブナバナバ! by能登麻美子』
そして、最後に連名で…。
『WE LOVE NABA!! byザ・ナバタメーズ』
私は泣いた。声を上げて泣いた。

572 :名無しさん@秘密の花園:2006/05/21(日) 21:52:05 ID:4B9nS7Kg
>>564
GJ!
確かにみゆみゆがゲストのとき麻衣ちゃん少し寂しそうだったな

573 :556:2006/05/22(月) 01:54:26 ID:ZuOzh0xq
>>568 GJありがとうございます。普段は一人称の愛×麻衣を書く人で、三人称は複数キャラを均等に動かせる面白さがあるけど、描写密度が下がり難しい。

>>569 愛×麻衣を資料化したくて、こんなの作ってた。
http://wiki.livedoor.jp/rttbl/d/

574 :名無しさん@秘密の花園:2006/05/22(月) 02:56:38 ID:1BdhVkCm
>>534
この土日でまとめようかと思ったら何もせずに今になった。

575 :名無しさん@秘密の花園:2006/05/22(月) 09:40:38 ID:oZwtgncL
>>573
そのまとめに萌えた

576 :名無しさん@秘密の花園:2006/05/22(月) 11:54:03 ID:v3flC76I
>>573
まとめ(・∀・)イイ!!!
テラ萌え
GJ&乙。

577 :名無しさん@秘密の花園:2006/05/22(月) 12:45:24 ID:p1UgOyRJ
一昨日に朴さんのお茶会に参加して話していた話だけど…山口真弓さんのお誕生日会に釘宮の名が上がった途端皆が絶叫したのは…なんでだろ。やっぱりあれなのか…!

…でもここ最近朴は山口さんと毎日一緒にいるらしくよく添い寝や膝枕をしてもらってるみたい(笑)其れが釘宮だったら最高なのに…。

578 : ◆cVAdsO2Fdk :2006/05/22(月) 16:37:12 ID:oZwtgncL
>>573
GJ!
いや、これはすごく助かります。参考にさせていただきます!

でもふと思ったことが。
私はなんとなく愛ちゃんの誘い受けかと思ってたんですけど、
世間一般的には愛ちゃん攻めなんでしょうか?

579 :556:2006/05/22(月) 19:23:57 ID:ZuOzh0xq
>>578 世間一般的には愛ちゃんを攻めさせたり受けさせたりする人は危険人物と思われ。

実は私もエロイ人に聞きたいんですが、誘い受けっていうのは、攻めの一形態なんですかね?
両方向に行けるのが長続きのコツじゃないかと思ってみたり。


580 : ◆cVAdsO2Fdk :2006/05/22(月) 19:42:24 ID:+8e1+L79
>>579
つまり、攻めとか受けとか気にせず二人をイチャイチャさせてればいいってことですね
お答えありがとう

581 : ◆JirmzAivjs :2006/05/23(火) 18:36:06 ID:Q+JiOo2g
最近、投下が多く賑やかで何よりです。
某アニメで盛り上がってるのか謎なカップルですが、自分以外に需要があることを願って投下。

582 : ◆JirmzAivjs :2006/05/23(火) 18:37:26 ID:Q+JiOo2g
アフレコもひと段落し、休憩中のスタジオ内。
「やめてよー、くすぐったいよぉ」
いつもと同じように、一人の女性を中心として華やいだ空間が拡がっていた。
「やめてってばぁ」
口では嫌がりながらも、その表情はなんとも言えなく嬉しそう。
マスコット的な可愛らしさを持つ彼女。
少し大袈裟なぐらいの反応をしながら、今日もやっぱり人気者。
(面白くない)
そんな空間から少し離れ、冷めた目線で見つめる女性の話。

面白くない。
何が面白くないのかは、はっきりと言えない。
だけど、心の中になんとも言えない気持ちがゆっくり染み込んでいくのは分かる。
「やめてよー」
そう言う顔は、私に向ける笑顔と同じ。
いつでも元気、それは彼女の好きなところ。
「やめてってばぁ」
そう言う声は、遊んで貰えて少しだけ嬉しそう。
嘘みたいに素直、それも彼女の好きなところ。
それなのに、なんとも言えない気持ちはドンドン大きくなっていく。

大丈夫だろうか?
今の私は、周りと同じような笑顔を浮かべているのだろうか?

(面白くないなぁ)
これぐらいのことでそんな気持ちになっている自分。
それが一番面白くなかった。

583 : ◆JirmzAivjs :2006/05/23(火) 18:38:42 ID:Q+JiOo2g
やっと訪れた二人きりの空間。
自分の家なのに、何故か彼女はソワソワそわそわ。
一方私は、心のどこかが整理できてない。

「あの・・・お茶飲む?」
「いらない」
「じゃあ、何しよっ」
「ちょっと落ち着いたら」

うーっ、困ったようにちょっと呻いて同居猫に助けを求める未祐。
「にゃー」
部屋の中の微妙な空気を察知したのか、嫌がるように未祐の手から隣の部屋へと消えてしまう。
「・・・あの・・・・ね」
背中から聞こえてきた声。
「何」
振り返ると、丸っこい顔とぶつかりそうになった。

584 : ◆JirmzAivjs :2006/05/23(火) 18:39:32 ID:Q+JiOo2g
「・・・・なっちゃん」
その甘えたような声が私の心を逆なでする。
「だから、何」
さっきまで愛ちゃんに甘えていた声。
「何か怒ってる?」
真っ直ぐに私を見つめてくる瞳。
「別に・・・何でも無いわよ」
それは、さっき愛ちゃんに可愛いと言われていた瞳。
「あの・・・ごめんね」
違う、何もしてないんだから謝らなくてもいい。
「気付かないうちに、また変なことしちゃった?」
謝らないといけないのは、勝手に怒っている私なんだから。
「こんなんじゃ、なっちゃんに呆れられちゃうね」
だから、そんなに優しく笑いかけないで。

「・・・って」
「ん?」
話しかけられて嬉しそうな笑顔。
「何でも無いからほっといてってば」
その表情のまま、未祐の動きが固まった。

585 : ◆JirmzAivjs :2006/05/23(火) 18:42:18 ID:Q+JiOo2g
「ごめんね・・・お風呂入ってくるね」
へへっと笑って、私から遠ざかっていく彼女の姿。
(ちょっと待って)
焦り、後悔、反省。
いろんな感情が私の体を突き動かす。
「なっちゃんは、後からゆっくり入ってね」
静かに聞こえてくる声は、ほんの少し不安定に揺らめいている。
(あと少し)
あと少しの筈のこの距離がもどかしくて、思いっきり手を伸ばす。
「・・・・ごめん」
やっと届いた指先で、私は未祐の震える体を掴まえる。

「ごめんね・・・なっちゃん」
「謝らないといけないのは私でしょ」
いつも笑っている彼女。
それは、誰にも真似出来ない彼女の強さ。
「ごめん。ちょっと八つ当たりだった」
それを傷つけてしまったお詫びもこめて、いつもよりちょっと強く抱きしめてみる。
「あの・・・・なっちゃん」
ふんわりと香る、お菓子みたいな甘い香り。
「どうしたの?」
恥ずかしそうな声に誘われて、また少し腕の力を強くする。
「ちょっと離してほしいな」
耳元に聞こえてくるのは、消え入りそうな小さい囁き。
「まだ怒ってるの?」

答えを知っているのに質問するのは性格が悪いのだろうか?

586 : ◆JirmzAivjs :2006/05/23(火) 18:43:55 ID:Q+JiOo2g
「違うよ、怒ってなんてないよ」
「じゃあ、なんなのよ」
何にせよ、離れてくれ・・・と言われるのは、あんまり嬉しい事ではない。
「あの・・・なんでもない」
「何でも無くても離れて欲しいぐらいに嫌われたんだ」
「違うよ。そんなんじゃなくて」
「はっきり言えば」
「あのね・・・・・鼻かみたい」

「ごべんねぇ・・・きらにびならばいでぇ」
(子供じゃないんだから)
真剣な場面に似合わない光景。
なのに、ドンドン心が暖かくなるのはどうしてだろう?
「何言ってるのか分かんない」
「むーっ」
「ほら、怒るとまた鼻水垂れてるんじゃない?」
「意地悪・・・・ちゃんとかんだもん」
すっかり何時もと同じ、賑やかな空間。
「どうだか・・・ほら、目閉じて」
そこに似合わない涙の跡を静かに拭き取る。

587 : ◆JirmzAivjs :2006/05/23(火) 18:44:41 ID:Q+JiOo2g
「・・・ん」
(何もそんなに閉じなくても)
やっぱり子供っぽい仕草がよく似合う。
(・・・・はぁ)
胸の中の怪しい気持ちを誤魔化すように、少しだけ強引に擦っていた時
「あのね・・・・なっちゃん」
私の左手が、そっと暖かいものに包まれた。

「まだ怒ってる?」
時々考える事がある。
もしこの手を握り返したら、彼女はどんな顔を見せてくれるのだろう?
「もしかして・・・・家来るの嫌だった?」
どうして、こんなに真っ直ぐに見つめてくるのだろう。
この瞳に見られたら、隠している気持ちまで覗かれてしまいそうで少し怖い。
「そんな訳無いでしょ」
「でも」
「大体ね、嫌だったら来ると思う?」
「じゃあ、なんで・・・」
不安そうな表情。
そんな顔は見たくないから、プニプニの頬を攻撃してみる。

588 : ◆JirmzAivjs :2006/05/23(火) 18:45:18 ID:Q+JiOo2g
「もしさぁ、私ともっちーが目の前でイチャイチャしてたらどう思う?」
「・・・いいなぁって思う」
「あのねぇ」
「でも・・・・でもね、ちょっと嫌だな」
プニプニの頬っぺた。
「ちょっとだけ?」
そこが熱が集まってきてるのが、正に手に取るように解る。
「・・・・・凄いやだ」
「そう言う事よ」
「そう言う事って・・・・いひゃい、いひゃいよ」
「はい、お終い」
とぼけた顔になんだか腹が立って、思いっきり頬を伸ばしてから離す。

「さぁ、お風呂でも入ろうかな」
「ねぇ、なっちゃん。今のどういう」
他人の気持ちに敏感な貴女。
「ぼーっとしてる暇あるの」
「ぼーっとしてるんじゃなくてね」
自分の気持ちに素直な貴女。
「ほら、早くしないと一人で入るわよ」
「ちょ・・・ちょっと待ってよぉ」
何時になったら、私の気持ちにも気付いてくれるの?

589 : ◆JirmzAivjs :2006/05/23(火) 18:46:57 ID:Q+JiOo2g
広い・・・とまでは言えないベッド。
けど、もっと有効利用は出来ると思う。
「あったかーい」
「暑いわよ」
「そんなこと無いよ」
耳元を擽る笑い声。
あんまり感じないけど、少しは感じる胸元のふくらみ。
子供みたいに遠慮なしにくっついて来る体。

(少しは考えなさいよ)

本人に自覚は無いと思う。
無いんだろうけど、だからこそ手に負えない。
「へへっ」
「何よ」
「何でも無いよ」
自制心。自制心。
少しでも心を落ち着かせる為に、それだけを繰り返す。

590 : ◆JirmzAivjs :2006/05/23(火) 18:47:51 ID:Q+JiOo2g
「言っても変な子だって思わない?」
「もう充分思ってるから、安心して言ったら」
「むーっ」
「怒ってないで、早く言ってよ」
「あのね・・・・なっちゃんのお肌ってスベスベだね」

ブチッ。
その声を聴いた瞬間、体の中で何かが弾けた。

「きゃっ」
暖かい体を、自分でも驚くぐらいの速度で下敷きにする。
モジモジ動く腕を、彼女の頭の上でしっかりと固定。
「未祐の肌は、苺大福なんだったっけ?」
見る見る赤くなっていく頬は、見る者を誘惑でもしているのだろうか?
「なっちゃん」
「何?」
「苺大福って・・・好き?」
「さぁ・・・・食べて見ないと分かんない」
折角だから、一晩かけてゆっくりと味わってあげる。

終わり

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